チンアナゴ風宇宙人が襲来していた。かつての人類の叡智だけでは対抗できず、人類は彼らに白旗をあげた。チンアナゴ風宇宙人が要求したのは「人類の意識データ」だった。肉体と精神のすべてをデータに変換し、彼らの概念データサーバに転送する。そのサーバでは人類が肉体を持っていると錯覚したまま生活をしているのだった。
チンアナゴ風宇宙人は、魂という概念が理解できていなかった。第一次転送群が意識をデータに変えた際、サーバに保存しているはずの意識体の劣化が起きていた。失敗だった。最終的に第一次群のデータはサーバからどうしてか消えてしまったのだ。
チンアナゴ風宇宙人は論理思考サーキットを回し、「墓」というモニュメントが重要なのではないかと考えた。物理的なアンテナ、故郷と魂を接続しお互いを常に相補しあう要素が不可欠と考えたチンアナゴ風宇宙人は、人間それぞれが一番大切にしているもの、あるいは魂と意識とを不可分に結びつけているものを検索し、それを集団墓モノリスへ格納することで実現しようとした。
第二群のデータ化は概ね成功したようだ。チンアナゴ風の生体石像を用意することで「祈り」という想いを常時墓に注ぎ続け、「あなたたちのことを忘れない」という、魂と意識をつなぐブイを設置したのだ。彼らは祈りをサーバーと墓モノリスへ捧げるという行為をすることで、人類の意識と精神のデータをサーバへ留めることに成功した。
そうして、第三・第四の人類も意識データへと変換されていった。本来であれば人類全てをデータ化する予定だったが、人類がわずかながらでも存続をするように、また肉体的人類と意識的人類の両方を生かしておくために、「彼らの記憶を初期化した上で」集団生活ができるように配慮した。
その生き残りのチトとユーリは、仮初めの集団を後にして旅をする。そう、「彼らを忘れてしまわないように旅をする」のだった。